食事の時の「頂きます」は、 食物となったおびただしい命に対して恐縮する気持ちと、食物を与えてくださったことに対して感謝する気持ちを表したことばです。 土地も、私たちがここにいなければ、悠久に自然の姿を保っていたはずであります。建物を建てることは、その悠久の土地を壊し、 少なくとも何十年か占有する事を意味します。私たちの祖先は、このことを恐れ多い事として、事情を述べて許しを請うことにしてきたのであります。
悠久の自然を神と崇め、その土地の神様(大地主神) を招いて、その儀式を厳粛に執り行ってきました。これが地鎮祭であります。
山で木の命を頂く祭りや、木材に刃物を入れはじめる儀式等、今は大きな神社だけに残っている沢山の祭りを合わせて考えると、 日本人が如何に自然の恵みに感謝し、自然を大切にしてきたかが分かります。
地鎮祭の起源は古く持統天皇の御代(西暦690年)にはすでにこの祭の記録があり、古代より土木・建築等に伴う重要な祭りとして行われてきました。
地鎮祭は、私達の人生にも誕生以来いろいろな区切りがあり、その時々にまつりを行い無事発展を祈ることと同じく、建築を行う場合に於いても着工に当り、その土地の守護神に無事完成を祈願する大切な祭りです。また、工事の進展に伴う祭りとして、上棟祭や竣工祭を行いますが、竣工祭は無事完成を祝い、清め祓いを行うと共に末永く無事繁栄を祈ることです。
また完成後は神棚を設けて神札(おふだ)をおまつりすることも大切なことです。以上のように、地鎮祭は建築における最初の最も意義深い重要なお祭りです。
祭場は本来敷地内全体であります。
現在は、そのほぼ中央に忌竹 四本を立て、 注連縄をして祭場とし、そこに祭壇を設けます
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榊に紙垂(しで)や鏡、麻をつけたもので、お祭りにあたりお降り願う神霊の依代(よりしろ)として設ける。
斎竹(いみだけ)
神様を迎える清浄な場所の表示として、青竹を祭場の四隅に立てる。(1辺約2メートル四方)
注連縄(しめなわ)
竹の上部約2メートル高さで右奥(艮(うしとら)の方=東北)の隅より時計回りに張りめぐらす。
斎竹・注連縄と同じく清浄な所としての表示で、1辺に5垂(たれ)づつ付ける。
盛砂ともいい、鍬入れの儀に用いるため、祭場の近くに円錐形に高さ40センチ程度の砂を盛る。(施工者が準備)
神様をお迎えするにあたり、祭場、神饌(しんせん)、参列者等を祓い清めるための祓具(はらえのぐ)で、榊や白木に紙垂や麻を付したもの。
四方四隅を祓い清め供物をして地霊を鎮めるためのもので、紙と麻を2センチ程に切ったもの(切麻(きりぬさ))と、米、酒、塩など。
※四方祓については、その地域の信仰形態により特殊な祓いが行われる場合がありますが、「御神土」及び「清め砂」等をもって四方四隅を祓い清める場合もあります。
施主及施工者が初めてその土地に手をつけることを神前に奉告する儀式。
忌 鎌 (いみかま) |
白木で作り、柄を白紙で巻き、麻又は水引で結んだものを使用するのが本来ですが、新しい実用品を用いてもよい。 |
忌 鍬 (いみくわ) |
忌鎌と同じく白木で作り、白紙で巻いたものを使用するのが本来ですが、クワ等の実用品を用いてもよい。 |
忌 鋤 (いみすき) |
忌鎌と同じく白木で作り、白紙で巻いたものを使用するのが本来ですが、スコップ等の実用品を用いてもよい。 |
忌 鎌 (いみかま) |
神職より忌鎌を受けた設計者または施主は、神前に一礼、斎砂の前で草を刈る所作を3度行う。 終って神前に一礼の後、神職に返し自座に戻る。 |
忌 鍬 (いみくわ) |
神職より忌鍬を受けた施主または施工者は、神前に一礼、斎砂の前で左足を引いて、地を穿つ所作を3度行い砂をくずす。 終って神前に一礼して神職に返し自座に戻る。 |
忌 鋤 (いみすき) |
神職より忌鋤を受けた施工者は、神前に一礼、斎砂の前で左足を引いて、地を穿つ所 作を3度行い砂をくずす。終って神前に一礼して神職に返し自座に戻る。 |
鎮 物(しずめもの)
地霊を、和(なご)め鎮める為に捧げる物で、人像(ひとがた)・刀・矛・盾・鏡等を辛櫃(からひつ)に納めて埋納する。
玉 串(たまぐし)
1)神職から玉串を受け取り、神前の玉串案(台)の所まで進み玉串を持ったまま一礼をする。
次に榊の根本を右へまわして神様の方に根本を向けて、案上(台の上)に捧げるようにして置く。
2)二拝(頭を深く二度下げる)
3)二拍手(二度拍手を行う)
4)一拝(頭を深く一度下げる)
終って自席に着く
神饌は神様に捧げるお供え物です。四季おりおりの新鮮な物を選ぶことが大切です。
お祭りの規模によっても量が変わりますが三方(供える台)5台から7台程度準備することが必要です。
(1台は大皿一盛程度)尚野菜の中には、ニオイの強い物(ニンニク・ネギ等)は除くようにします。
洗米 |
白米一升 |
鏡餅 |
紅白の重ね餅ですが、最近、大祭の外は用いないことが多くなりました。 |
神酒 |
お酒を瓶子二本に盛って備えます。 |
掛魚 |
海魚と川魚ですが、どちらかで結構です。 |
掛鳥 |
山の鳥と水鳥ですが、最近よく卵で代用されます。 |
海菜 |
海藻類で、沖の藻、岸辺の藻といいますが、殊更選ぶまでではないと思われます。 |
野菜 |
甘菜、辛菜ですが、彩りで選ぶのもよいでしょう。自分の作った物を備えるのは大変よいことです。きれいに洗って供えます。 |
果物 |
時の木の実、菜果を彩りよく。 |
塩・水 |
塩と水を夫々の器に、盛ります。 |
※神饌ではありませんが、蝋燭二本用意してください。
昔はもっともっと厳しかったようですが、今日これが通常のようであります。
「三献肴」は旅先や山仕事等のときの、臨時の作法のようです。
地鎮祭をはじめ各祭典の奉仕にあたり、神社への謝礼をのし袋に入れて奉納する場合、 表書きは上記のような書き方で結構です。