「いやー、なんだや、こだ山んながにやー?嘘みでだなやーっ」
はじめてそ光景を見た人は、本当に狐につままれたような顔をする。だって、夜更けの人里離れた山奥に突如として商いの出店が連なっているのだから。
福島県相馬郡飯舘村に鎮座する虎捕山津見神社の縁日は旧暦の11月15・16・17日。相馬といえども阿武隈高地のてっぺんで、夜には氷点下近くまで気温が下がる。空には冷たそうな満月。
それなのに小学校のグラウンド2面分ほどの駐車場は自家用車やバスでいっぱいなのです。作業着姿の一団や、家族連れ、カップルなど、老若男女が引きも切らずに訪れて神殿前には長蛇の列が出来ています。
山の神さまとして、遠くは秋田の方まで林業関係者などからの信仰があります。また、相馬方面の漁師もたくさんお参りに来ています。
狛犬が特徴的で「白狼」なのだそう。縁起やいわれはHPで見て下さいね。
ここ5年ほど、欠かさずお参りしています。
何がいいのかって?それは何度訪れても不思議で、懐かしいお祭りだから。
真っ暗な参道にたくさんの夜店が並び、そこを参拝客が本当に楽しそうに散策している風景は、何度来ても夢を見ている心地になるのですよ。
それに、参道に小屋がけがしてあるんです。茅葺きで50畳はあるでしょうか。呼ばれて入ると、ぶっつけで作ったテーブルの下に炭が赤々と燃えていて、おでんやモツ煮、煮込みうどんのかおりがたまらないんです。
そこで腰を下ろし一杯やったもんならもう、参拝で冷えたからだが暖まって、何とも言えない幸せな気持ちになるんです。
気の知れた連中と一緒ならなおさら楽しく、隣のテーブルや小屋の親父とも話が弾みます。
地区有志、一族、婦人会などがそれぞれに出していて、けっこう実入りもあるとか。そうだよね、酔っぱらいがかわいい売り子の村娘たちに鼻の下ながくしてバンバン注文するもん。
それぞれの小屋で共通するのは「あん餅」。中にあんの入ったやつで、見ている前でどんどん作っていく。これがまた旨そうで、名物としてみんな買っていくわけ。
お祭りはむかし、夜通し3日やったのだそう。今は参拝客も減ったとか。それでもすごく賑わっていますよ。
今年は11人で行きました。初めての人も半分。「おらほでもやっぺや!」の声しきり。
そうです。そのためにも皆さんをお連れしているんです。
どうです、来年やりますか?とりあえず地元部落で小屋がけしますかね。
百聞は一見にしかず。ぜひお参りしてみて下さいな。時間は夜。狐、いや狼に化かされるのも良いものですよ。
でも、くれぐれもスタッドレスタイヤで。道路もわかりづらいので迷わぬように。